
2017年11月に施行された「技能実習法」ですが、外国人技能実習制度を適正に運用することを目的として施行されました。
旧制度からの変更点は、下のページで詳しく説明しています。
今回は新制度での監査、つまり技能実習法に則した実習が適正に実施されているかを確認するための項目をご紹介したいと思います。
01 新しくなった「技能実習法」での監査10項目
監査での確認項目は以下の10点です。
1-1 労働条件の明示
1-2 賃金台帳の作成
1-3 労働時間の管理
1-4 賃金支払い
1-5 時間外・休日・深夜等割増賃金支払い
1-6 最低賃金額以上
1-7 宿泊場所
1-8 安全衛生教育
1-9 健康診断の実施
1-10 労働保険・社会保険の加入
01-01 監査項目その1~ 労働条件の明示
労働条件の明示は労働基準法第15条で定められています。
労働契約期間・就業場所・労働時間・賃金・退職に関する事項等を雇入れたい時や契約を更新する際、必ず労働条件を明示しなければなりません。
労働条件を明示しなかった場合は法律違反となりますので、ご注意ください。
01-02 監査項目その2~ 賃金台帳の作成
賃金台帳の作成は、各事業場ごとに賃金台帳を作成し、賃金計算の基礎となる事項や賃金の額などを必ず作成しなければなりません。
内訳としては、出勤日数・労働日数・労働時間数・時間外労働時間・深夜休日時間数・基本給や手当その他賃金などです。
賃金台帳は3年間の保存が必要です。
もちろん書類ではなくデータで保管しても問題ありません。
01-03 監査項目その3~ 労働時間の管理
労働時間の管理は、実習生の始業時刻・終業時刻を、雇用主自ら現認もしくはタイムカードなどの客観的な記録を基に確認して記録します。
労働時間の管理は省令で定められていますので、雇用主は適正に把握する事が大事となります。
01-04 監査項目その4~ 賃金支払い
賃金支払いについては、通貨で直接技能実習生に、その全額を毎月1回以上、一定期日に支払うこととなっております。
労働契約に則した賃金が適切に支払われているか、また控除についても、法令で定められているもの(社会保険料や税金など)、労使協定で定めたものだけが控除することができます(社宅費や寮費などに限られます)。
01-05 監査項目その5~ 時間外・休日・深夜等割増賃金支払い
時間外・休日・深夜等割増賃金支払いについては、法定の労働時間を超えた労働時間を、法定の率で計算した割増賃金を支払います。
・時間外労働 ・・・ 25%以上
・深夜労働(午後10時~午前5時)・・・25%以上
・休日労働・・・35%以上
また、技能実習制度では、時間外労働を内職として技能実習生におこなわせることは認められておりません。
01-06 監査項目その6~ 最低賃金額以上
最低賃金額以上は、地域別最低賃金と特定(産業別)最低賃金の二つに分かれており、前者は各都道府県の事業場で働く労働者とその使用者に対して適用されるもので、その定められている最低賃金以上で支払わなければなりません。
後者は、その名の通り特定の産業に対しての定められているもので、前者と同時に適用される場合は、どちらか高い方の最低賃金で支払えば問題はありません。
01-07 監査項目その7~ 宿泊場所
宿泊場所は、床の間や押し入れを除き、一人当たり4.5㎡以上を確保する必要があります。
寮や社宅、賃貸物件も同様ですが、居住される人数に注意して必ず4.5㎡を確保して下さい。
また、計画認定時に申請した居住場所と、実際に実習生が居住している場所が違っていたら必ず変更届を提出して下さい。
01-08 監査項目その8~ 安全衛生教育
安全衛生教育は、作業内容や機械・原材料の取扱い方法、安全装置の保護具などの取扱方法などの教育についてです。
安全衛生の確保に必要な事項等を雇入れ時に教育していると思いますが、危険有害業務に従事させる場合は、技能講習や特別教育を受けさせなければなりません。
当然ですが、免許や資格がなければ操作させる事はできませんので、必ず遵守して下さい。
<主な制限免許>
・クレーン(移動式含む)、フォークリフト、玉掛け、アーク溶接など
安全衛生教育としての確認書類は、実習計画や実習日誌・特別教育実施結果などです。
01-09 監査項目その9~ 健康診断の実施
健康診断は雇入れ時に必ず実施しなければなりません。
定期健康診断は必ず1年に1回実施してください。
常時深夜作業に従事する者や、特殊健康診断は6ヶ月に1回の実施が必要です。
※特殊健康診断とは、有機溶剤の製造または取扱業務(屋内作業場やタンクの内部作業など)・粉塵作業・特定化学物質の製造または取扱業務・鉛業務・四アルキル鉛業務などに従事するものが受信する健康診断です。
01-10 監査項目その10~ 労働保険・社会保険の加入
労働者(技能実習生含む)を1人でも雇用している場合、労災保険・社会保険に加入しなければなりません。
雇用保険や健康保険、厚生年金加入も義務付けられていますのでご注意下さい。
確認書類としては、健康保険・厚生年金資格取得確認通知書、標準報酬決定通知書です。
02 まとめ
今、日本に受け入れている技能実習生は約23万人にのぼります。
技能実習をおこなうことが目的ですが、しかし日本経済の一部を支えていると言っても過言ではありません。
一方、インターネットやSNS等の情報伝達方法が発達し、情報収集も容易になったことで、実習制度を不正に利用したり、ブローカー等のあまい誘惑にかられて技能実習生が失踪し、その結果一部メディアに取り上げられているような不法労働者となり、犯罪に手を染めたり強制送還されたりという悲惨な結果となるケースも多く存在します。
このような事を防ぐために、新たな施行された「技能実習法」のもと、技能実習機構という認可法人が設立されました。
今まで以上に監理団体や企業に求められる監理は大変厳しいものとなってきますが、監査に関する項目も踏まえ、実習制度をご理解した上で、適正な実施を心がけていただければと思います。